古本を買取りに出した時、購入した時点で新品は絶版になっており、けっこうなプレミアム価格で古本を買ったのに、査定価格が非常に安かった、ということはありませんか?
単純に査定が安すぎる、というケースもなくはないでしょう。普通に人気の移り変わりなどで評価が下がった、というのも考えられます。逆に、高値なのが一過性の現象だった、ということも。
ですが、長いあいだ高値で安定していた本ならお客様がプレミアム価格で買ったあと、その本の復刊、復刻、あるいは新版が出ているという可能性もあります。
マニアックな専門書でも起こることなのですが、例えばここ数年でもわりあいメジャーな本として田中角栄の『日本列島改造論』、藤田田の『ユダヤの商法』、リー・クアンユーの『リー・クアンユー回顧録 上下』などが挙げられます。
こうした本はそれまでは売値が5000円以上、タイミングによっては10000円くらいでもわりと間を置かずに売れていたのですが、復刻・復刊や新版が出たため古本価格が暴落。当然、それにあわせて旧版の査定価格も大幅に下げざるを得ない状況になりました。
同じ内容でもっと新しく、安い新品が買えるのですから、当然と言えば当然です。そちらが絶版になればまた値上がりする可能性もありますが、これまでより古本での流通量は増えるわけですから、何年先、何十年先になるか……。また、そういう本は電子版も出たりするので、以前のように書籍を買わないと読めない、というほどの希少性はなくなります。
この影響が出るのは買取を依頼するお客様だけではありません。高い本だよな、と思って高い査定価格にて買い取らせていただいて、売る段になって復刻・復刊や新版がでていることに気づいて膝から崩れ落ちる。あるいは買い取った時点では大丈夫だったのに、売れるまでのあいだにそうした本が発売されて泣く泣く値段を下げる(たいていは買取価格以下に)、といったケースもあります。
当然、そうした本が出るときに出版社から古本屋へお知らせが来るようなことはありません。出版社のサイトの近刊案内へ掲載されているのを目にしたり、だいたいは新しい版が書店の店頭やAmazonなんかで売られているのを、ある日目にして気がつく、といった具合です。
そんな調子ですから、すべての古本屋がすみやかにそのことを知る、というわけではありません。そこでまだ高いと思っている店に高く買ってもらうべく、自店の在庫をそっと同業者の市場へ出す品物に混ぜ込んだりすることもあります。(当店はしたことないですが、復刊が出た直後の市場でそういう出品を見たことはあります。たんなる偶然の可能性もありますが)
もちろん高くて諦めていた人が買えるようになったり、それによって著作権者や出版社にお金が入るわけですから、悪いというわけではありません。むしろ、良いことと言えるでしょう。
しかしその一方で「良かったなぁ」と言いながら目に浮かぶ涙をぬぐって値下げをする古本屋や、「危っぶなぁ。この本去年、売ったところだったんだよ」と冷や汗を拭う古本屋がいることもまた事実なのです。
似たような例に「文庫版が出た!」というのもあります。